打越眠主主義人民共和国

”うちこし”と読みます

焼肉屋を弔う文

高校時代のクラスメートにあるひょうきんな男がいた。一方では徳田という奇抜な人物があると聞き、また琴次という名前のかぶき者が高二C組にあるとも聞いた。

高校を卒業する日、そのひょうきん者の名前が徳田琴次であり、徳田と琴次とひょうきん者本人の三者が実は同一人物だったと知り、私は筆舌に尽くしがたい衝撃を受けたのである。徳田は予断を許さない人物であり、他人を批評する際には自身の個性を棚に上げて「あいつは独特だね……」の一言で済ますのが常々であった。

風の噂によれば、大学卒業後徳田は実家の僧院を継いだという。

 

それから数年が経った。私は元ラグビー部の大海氏から徳田氏が檀家から著しい糾弾を受けていることを聞いた。彼はフェイスブックに実名のアカウントを開設し、職業を焼肉屋に設定。火葬を執り行った日に「今日も繁盛しました! お客様に感謝」などと投稿していたのである。

感動した。やはり徳田は社会秩序に反逆する男である。同期生たちが次々と社会に適応していくなかで、急流に逆らって根を張る石のように徳田はその前衛性を保っていた。

その徳田も今は進退窮まっている。やはりおれたちは時代遅れなのか? それを確かめるために、来る新年度に私は房総で船に乗るつもりでいる。

 

※恥金時関連はそのうち更新します